『シンデレラが輝けない理由!!②』
みなさまこんにちは、もちルダです。
前回、渋野プロのプレーの弱点としてショートゲーム時の『ボールコントロール力』といった点を上げましたが、彼女にはもう一点弱点が存在します。
と言ってる間に、全米女子オープンで3日目終了時に首位と快進撃を続けていますが、これにも通じる内容ですので、ぜひご覧ください。
【渋野プロの練習スイング】
まず彼女が絶好調だった2019年9月の練習風景をご覧ください。
深めのアドレスから、やや平行に体重移動しつつ大きく振り抜いております。
ドライバーも同様に大きく足を開きどっしり系のアドレスから一気に振り抜く、というイメージのスイングです。
で、より海外ツアーでの活躍に意識を向け始めた12月の練習スイングがこちら。
かなりボールを右に置き、強くてライナー性のボールを打つ練習をしているようですが、ここに大きな落とし穴が潜んでいます。
どれぐらい差があるか、というとこんな感じ。
特に彼女の特徴として、強風やボールをコントロールしたいとき、ラインを出してピンを狙っていきたいときに、通常よりボールを右に置き強くアタックするような打ち方を多用しますが、これ自体が彼女の弱点となっているというパラドックスを抱えています。
ん、また何言ってんだ?
風吹いたときやライン出すときには、ボールを右に置いて高さを抑えてコントロールするに決まってるだろ!!
と、お考えの貴方。
わかりますよ😏
何を隠そうこの僕も、そう思って信じてやまない時期がありました‼️
実はこの
ボールを右に置いてドンッ!!
かなり危険な打ち方なんですね。
それは何故か?
【ボール位置が与える影響】
まず、下の画像を見てみましょう。
このようにアドレスに対して、黒・黄色・赤のポジションにボールがあるとき、クラブが通る軌道が変わっていきます。
黒:アウトサイドイン軌道
黄:ストレート軌道
赤:インサイドアウト軌道
このとき、フェースアングルがターゲットラインに対してストレートだとすると、真っすぐ飛んでいくのは黄色のみとなり、黒はフェード系、赤はドロー系となります。
何だよ、ドローで良いじゃん‼️
球も強くなって、一石二鳥だろ‼️
とお考えの方、これあくまで2Dでの話ですからね
で、ここにアタックアングルという概念をブレンドし3Dにするとこうなります。
赤:ダウンブロー
黄:クラブの最下点
黒:アッパーブロー
こうなります。
つまり、2Dで考えているときの赤のボール位置は、実際にはかなりインサイドアウト軌道の途中で当たっていることになり、ターゲットラインに対しプッシュアウト寸前のクラブ軌道であり、これに対してフェースをかなり閉じる必要が出てきます。
そうすると動画のような彼女の練習は、そもそも真っすぐ飛ばすこと自体が非常に難しくなっており、プッシュアウトを打つ方がより自然なクラブ軌道であることが容易に理解できるはずです。
ただ、実際渋野プロはこの動画ではフィニッシュまでしっかりと振り抜けており、曲がっている様子ではありません。
つまりこのインパクトでは、
①ボールを右置いて
②プッシュアウト寸前の軌道から
③フェースをかなり閉じる or
ハンドダウンでスピンアクシスを左に傾け、
④無理やりドローを打っている
ような状況となり、非常にピーキーなインパクトになっていることが明確に見て取れます。
どういう事かというと、フェースを常時フック側に設定して打たなければならないため、入力が少しでもズレるとコントロール性が極端に下がる、という要因をはらんだ練習だということです。
これが癖となり常態化すると、ボールを右に置くことがデフォルト状態となり、常に
プッシュアウトとフックに悩まされることとなります。
実際、彼女がディフェンディングチャンピオンとして挑んだ2020年の全英女子オープンでは、強風などの外部要因により、この右足寄りに置いて潰しにいくショットを多用するシーンが多く、結果あえなく予選落ちとなってしまいました。
また、彼女のスタッツのウィークポイントであった、予選通過のかかる2日目のスコアが極端に悪くなる現象もここに共通しているのではないか、と推測します。
つまり、予選通過を優先し安全第一のショットを多用した結果、逆にコントロールできなくなる、といった悪循環に陥っていた可能性が高いですね。
実際、彼女はドライバー以外の全ショットでリスク回避したいときのシチュエーションでボールを右に置く癖があり、高さを出しつつ初速を抑えるショットを最も苦手としています。
【サンドセーブ率が低い理由】
前回のスタッツ批評では、サンドセーブ率15%というかなり厳しい数字でしたが、この右に置く癖が悪影響を及ぼしていることは間違いないと思われます。
では、参考までにこの方々にご登場いただきます。
【猫ちゃんパンチ虎男さんの場合】
身体の中心にボールを置き、フェースを開いてかなりフリップのイメージで振り抜くことにより、高さ・スピン・初速をコントロールしています。
【マキロン君の場合】
ややボールを左足寄りに置き、フェースを開いてアウトサイドイン軌道の途中で捉えています。
かなりシンプルなバンカーショットと言えます。
【シンデレラの場合】
若干のフリップは入っているものの、基本的にはドラホの途中なので、地面からクラブが抜けていくスピードが前者2名より大きく減速しています。
虎男さん、マキロン君に比べボールのあるラインに対して、最も手が離れているので、かなりハンドファーストにアタックするためヘッドの抜けが悪く、スピンが効きにくくなっている状況が伺えます。
この部分を修正することができれば、サンドセーブ率が劇的に改善するでしょう。
【2020年全米女子オープンでの好成績の要因とは?】
ただ、そんな中でも突如復活したシンデレラ。
執筆時点では3日目終了時でトップに立ち、復活優勝目前の位置まで来ました。
なぜこのような劇的な変化が訪れたのでしょうか?
これは全米女子オープン特有のコースセッティングにある、ともちルダは踏んでます。
どういうことかというと、
全米女子オープン:高さとスピンで止める技術が必要
全英女子オープン:弾道を抑えてコントロールする技術が必要
この違いがかなり大きく、彼女の悪癖を呼び起こしにくくなっていると推測します。
つまり、高さが必要な場合ゴルファー心理としてボールを左足寄りにセットし、打出角を確保したい、という心理が働くため右足寄りに置いてドンッ!!が必要ありません。
しかし、全英女子オープンのようなリンクスコースだと、どうしても球を右に置いてコントロールしようとする癖が出てしまい、コントロール不能になる。
という違いが、結果に大きく反映されているのではないでしょうか。
その結果、彼女のスイング軌道とフェースパスが無意識のうちに修正され、ショットのフィーリングや精度が格段に良くなっているのではないか、ともちルダは考えています
実際、元々悪くなかったドライバーショットの優位性がセカンドショットの精度が上がることで活かされており、74%と高いパーオン率が記録されています。
【シンデレラが輝くための条件とは?】
色々と考察してきましたが、もちルダ的には彼女はスランプではなく
『ボールを右に置き過ぎない』
これだけで復活できる、と考えます。
端的にいうと、これさえ気を付けるだけで、元々ダイヤモンド級の才能の彼女であれば、日本レベルでは他を寄せ付けない強さがあるはずです。
全米女子オープン最終日は強風が予想されており、彼女の悪癖が出やすい状況ですが、ボール位置が真ん中付近にセットされたままゲームが進めば、勝つ可能性がかなり高いのではないか、ともちルダは考えています。
このボール位置問題の病巣は結構根深く、もう少し復活まで時間がかかるかもしれない、と僕は予想していたのですが、コースに求められる条件に対して変化を見せた彼女の才能はやはり世界レベルなのかな、と考えます。
日本のスイング理論によく見受けられる、
という間違った概念は至る所に蔓延っており、安全第一に行こうとしてミスを繰り返す原因の一つとなっていることは間違いありません。
シンデレラでさえ町娘に逆戻りさせられるぐらいの影響を与えるボール位置問題。
みなさま、くれぐれもお気を付けください。
以上、シンデレラ編でした!!
次回は、『初速×スピン×高さの構成要因とは?』編です。
乞うご期待